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進行役の男とジオルグが消えた会場は、狂喜乱舞して喜ぶ人間と意気消沈して体育館を後にする人間の2種類が支配する混沌の世界と化した。
そんな会場の四隅の一角、背中が適度に固定される位置で厳正は寝ていた。
無論、完璧には寝ていない。
ただ単に目を閉じ、それによって目を休ませているだけだ。
もちろん試験に受かった者の中にはそんな厳正と喜びを共有しようと考えている者もいたが、厳正の醸し出す、自分達とは違う雰囲気に中てられ、実行に移した者は1人もいなかった。
だがどんなことにも例外は存在する。
今回で言えば厳正と同じく舞台に上がり、そして表彰された2人、アッシュ・グランツとガリア・クリムがソレ当たる。
「おい、裏口野郎。」
アッシュは厳正に話し掛けたが、厳正は微動だにしない。
その対応の仕方がまずかった。
アッシュは厳正の態度に腹を立て、声を荒げてもう一度厳正に話し掛ける。
「おいこら!!何シカトしてんだぁ!?」
もはや話しかけるというよりも怒鳴りつけると言った方が的確な程の声量を耳にして、ようやく厳正は閉じていた目を開ける。
「ふぁ……そんな大きな声出すと、周りの皆さんに迷惑ですよ?」
「うるせえ!!俺らにとってはテメェの存在の方が迷惑なんだよ!!」
アッシュのその言葉に厳正は眉を顰め、《念話》で自身の[武器]に話し掛ける。
(ねぇ〈ラグナロク〉、この2人って本当に人間なのかな?人間が本来口にしてはいけない言葉を平気で使ってるけど。)
厳正に〈ラグナロク〉と呼称された[武器]は質問に答える。
(残念ながら。ちなみに彼らは、失礼なことにマスターが裏金を使って試験に合格したと思っているようです。)
〈ラグナロク〉の言葉を聞き、厳正は壁に預けていた体重を自身の両足に戻す。
「僕の存在が邪魔って……一体どういうことですか?」
「その質問には僕が答えよう。大貴族・クリム家の次期当主の息子である、この僕がね。」
ガリア・クリムは、そう言って厳正とアッシュの間に入って来た。
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