第一章 少年魔導師

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ガリアの登場にアッシュはあからさまに嫌そうな顔をする。 「ガリア!横入りしてんじゃねぇよ!!」 アッシュの怒声に少々眉を顰めながらもガリアは言う。 「アッシュ……君の怒りも最もだが、ここは僕に任せてくれないかい?君の喧嘩口調より僕の美しい口調の方が、この愚かな少年も自分の犯した罪の重さが分かるだろう?」 「なるほど……確かにそれもそうだな!!」 ガリアの言葉をアッシュは笑って肯定した。 (ちょろいなーこの人……) 2人のやり取りを見て、厳正はアッシュをそういう部類の人間であることを確認した。 そしてガリアは厳正に話し掛ける。 「君、どの貴族の家の子だ?」 「えっと……僕は一般国民ですよ。」 「ハハッ!面白いことを言うね君は。そんな嘘、一体誰が信じると思っているんだ?」 ガリアは短く笑い、続ける。 「いいかい?実技も筆記も満点なんて、歴代のどんなに名を上げた偉人達でもなしえなかったんだ。つまり有り得ないのさ、君の成績は。となれば君の成績は、金の力を使ったとしか考えられないのだよ。だがね、君のしたことは賄賂と言って、紛れも無い犯罪なのだよ。君はまだ幼いから罪に問われないかもしれないが、君の両親は間違いなく貴族から追放され―――」 ガリアがそこまで言った時、厳正は2人の間を通ってその場を後にする。 突然の出来事に思考がついて行かない2人に厳正は言い放つ。 「法律の授業なら間に合ってるんで余所でやって下さい。」 「待てコラ。何勝手に話終わらしてんだ!?」 アッシュはそう言いながら厳正の左肩を掴んだ。 そんなアッシュに、厳正は言う。 「僕には関係の無い話―――」 「死ね。」 厳正が発言し終える前にアッシュはそう呟くと、魔力を込めた膝蹴りを厳正の腹部に叩き込んだ。 その結果、厳正は10メートル以上吹き飛び会場の反対側の壁に激突、その周辺には粉塵が舞った。 直後、会場中に複数の悲鳴が響く。 そんな中、ガリアは額に手を当てながら言う。 「アッシュ……君の一撃は重いんだ、あんな非力なガキに君が一撃を入れれば―――」 ガリアがそこまで言った時、試験監督者達が血相を変えて会場に入って来た。 「ほら、面倒な事に……」 ガリアは呆れながらそう言った。 それと同時に、重い一撃を喰らったはずの厳正が、粉塵の中から現れた。
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