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びゅうびゅうと風を切る音が耳に広がる。
いやー…、何故屋根の上を人を背負ってこの速さで走れる!?
入江さんは人じゃないのか!?
「……まだ付いて来ているな」
「え……?」
入江さんが面倒臭そうに呟いた。
って、追い掛けて来てる奴も人じゃないのか!?
怖いわ幕末!!!
すると入江さんは私をちらりと見ると、
「よし」
「いや何がよし!?」
ぐん、と走る速度を速めた。
「ぬんっ!?」
「……舌、噛むなよ」
何で速度が上がるんだよ!!?
入江さん凄ェよ尊敬するよマジで。
なんて悠長に感心してる場合じゃねーよ私!!!
高身長の入江さんの背中に乗るってのも不安定で恐ろしいのに、かなり高い屋根の上を、かなり速い速度で走る入江さんに乗ってるってのはある種の恐怖だ。
高い所は大好きなんだけど、自分の意思で動いてないから何か怖い。
「伊達」
「な、何でしょう…!」
入江さんが前を向いたまま私の名字を呼んだ。
思わず身構える。
「今から俺が行く所では男のフリをしていろ。その方がいい」
「……何処に行くのか敢えて訊きませんが……分かりました」
今の状況じゃ入江さんに従うしかないからね、素直に答えとく。
すると入江さんは勢い良く屋根から飛び降り……たぁぁああぁぁあ!!?
「─────ッ!!!」
声にならない悲鳴が喉から溢れる。
叫ばなかったのが凄いよ私!!!
たんっ、と軽い音を立てて入江さんが着地。
……何処だここ?
「ここまで来れば安心だ。奴も追っては来れない」
「あ、えっと……、ありがとうございます、入江さん」
「礼はいい。それよりも訊きたい事がある」
入江さんの背中から降りて礼を言えば、礼なんかより訊きたい事があるらしい。
って、私も訊きたい事あるわ。
ここ何処!!!
辺りを見てみると、塀に周りを囲まれた屋敷の庭に居る事が分かった。
かなり大きい屋敷だから、アレだ多分。ここに吉田稔麿とか久坂玄瑞とか高杉晋作とかが住んで……いる……んだろう……んん!?
ああぁぁああぁ!!!高杉晋作の存在思いっ切り忘れてたァァァ!!!
やべェ会ったら殺られる…!!!
ちょ、今すぐここから逃げたい……けど折角入江さんが追い掛けて来てた奴を撒いてくれたから逃げられない!!!
うわぁああ泣きてェどうしよう!!?
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