当初の目的を忘れたら終わり

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……入江さんが首を傾げたまま一向に口を開かないんだけど!!! 物凄く気まずいんだけどこの空気!!! 私が悪い事言ったみたいになってんじゃん! 私が入江さん困らせてるみたいになってんじゃん! 「おい九一、何してんだ?」 そんな気まずい空気を壊してくれたのは第三者の声だった。 「ん?つかその女誰だ?」 早速女だってバレちゃったよ入江さん!?何で!? そしてこの黒い髪にオールバックの紅い目をしたイケメンは誰!? 入江さんよりは背ェ低いけど確実に170後半はあるなぁこのイケメンさん。 何だか異世界の幕末って感じだ。 「九一」 「何だ」 「もう一度訊く。その女は誰だよ?何者だ?」 イケメンが入江さんを睨み付ける。 うっひょお、恐ッ! 「……拾った」 Σ入江さァァァん!!!私は犬か猫!!?ンな捨て犬拾ったみたいな口調で言うなよマジで! 「……九一。この前は迷子のチビ拾って来たよな……。人間拾うのが日課なのか?」 「伊達は迷子ではない」 「気になるのそこですか入江さん!!!」 そう叫びながら思わず入江さんとイケメンの間に割り込んでしまった。 ぬっ、イケメンからの視線が痛ェ…! 「お前伊達って言うのか?」 「あ、はいっ、そうですよー」 笑顔笑顔!笑顔って大事だよね!!! って事でへらりと微笑む。 「下の名は?」 「政奈です。あー…、貴方の名前を訊いても?」 「ああ。俺は栄太郎だ」 ……栄太郎!? ……って事は……吉田稔麿ォォォ!!? うわぁイケメンだ吉田稔麿!!! 「……何目を輝かせてんだお前」 「えっ、あ、いや、何でもないです!」 やべェやべェ、あまりにもイケメン過ぎて目に出ちゃったよ。 「……そうか。それで、お前は何者だ?」 「え、庶民」 頬をぽりぽりと掻きながら吉田さんに言えば。 「嘘だな」 「!?」 瞬殺!!? めちゃくちゃ疑われてんじゃん!!? いやまぁ疑われるのは当たり前だけどさ!!! 「何を驚いてんだ」 「……いや、まぁ……」 言葉を濁すと、吉田さんは入江さんに視線を戻し。 「なぁ九一。コイツが安全だという確証はあるのか?」 淡々とした口調で言った。 と、入江さんはすっと目を細め、ふっと微笑みながら口を開き。 「ない」 !? !!? ……断言されました。
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