当初の目的を忘れたら終わり

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「伊達が安全だという確証はない。だが、長州に危害を加える事はない。俺はそう思う」 「それはつまり、九一の勘だろ?」 「ああ」 頭上で二人が睨み合いながら会話している。 ……何故か入江さんが味方してくれてるから今は安全だけど、もし見限られたら……ヤバくね? え、何か凄ェ逃げたい。 「……九一の勘は良く当たる。それは分かってる。だけどな、それとこれとは別だ」 「何が気に喰わないんだ」 「だからそういう問題じゃねーよ」 吉田さんは呆れながら息を吐くと、私をジロリと見下ろしてきた。 ぐっ、心折れそうだ…! 「お前が普通の女だったなら、俺は九一の勘を信じた。けどお前は普通の女じゃねーよな。……何故男装してるんだ?」 「ちょ、誤解!私男装なんてしてません!ただ男物の着物着てるだけです!」 「何で男物を着てる?」 「動きやすいからです!」 吉田さんから放たれる殺気に若干ビビりながらも、事実だけを簡潔に述べる。 「女は淑やかにするもんだろ。動きやすい云々は関係ねェよな?」 「ッ、女だって動きやすくなりたい時もあるわ!!!」 「……あ?」 女は女はってうるせェんだよああン!!? 幕末って言っても、まだまだ男が優位ってのは分かってる。 だけど平成から来た私からしたら、その当たり前の事がめちゃくちゃムカつく。 そう思ってたのが完全に口調に出た。 それに気付いたのは、吉田さんから放たれる殺気がブワッと増えた瞬間で。 あ、手遅れだなコレ。 死亡フラグを自ら立てるとか私は馬鹿か。 でも、吉田さんからの殺気を遮ってくれる人が私の後ろには居る。 「稔麿」 「何だよ」 「伊達をあまり虐めるな」 入江さんが私の頭に軽く手を置いて言った。 「虐めてねーよ。疑ってんだ」 「疑う必要はない」 「だからそれはお前の勘だろ?そいつは幕府の戌の監察方に追われてた奴だろうが」 ……え、何で知ってんのこの人。 ってか幕府の戌って……ちゃんと新撰組って言ってあげろよ💧 「何で知ってんだって顔だな」 「そりゃあ……」 「気配だ気配。幕府の戌の監察方の気配は分かり易いんだよ」 吉田さんがため息をつきながら言った。 ……気配が分かり易いって、それ監察方としては失格じゃね?💧
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