当初の目的を忘れたら終わり

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「まだ外で徘徊してんぞ」 徘徊って……吉田さんどんだけ新撰組嫌いなんだよ。 いやまぁ仕方ないだろうけどさ、長州だし。 「おい九一。本当にこいつ何者なんだよ」 「伊達」 「てめェ俺をからかってんのか……」 吉田さんの周りがゆらりと揺れる。 あ、殺気でって事な。 「俺を納得させるだけの理由がねェなら今すぐこいつを追い出せ」 「理由はないが、追い出させはしない」 「九一てめェ……」 ちょ、何か吉田さんが今にも抜刀しそうなんだけど!!! なのに入江さんは物凄く涼しい顔してるよ凄いな!!! ま、まぁとにかく、入江さんが何故私を庇ってくれんのか訊くか。 「えっと、入江さん。何で私の事を怪しまないんですか…?」 「……目だ」 「え、目……ですか?」 「ああ」 入江さんが優しく微笑みながら頷いた。 ……目ってどういう事だろう。 入江さんは私に目線を合わす様に屈み、私の頭の上にぽん、と手を置いた。 「目を見れば、そいつがどんな奴なのか俺には分かる。立場上身に付いた処世術だ」 「……入江さんの目に、私はどんな風に映ったんですか?」 「……捨て犬」 「Σ!!?」 犬!?しかも捨てられてんのかよ私!!! うわぁぁあ、喜んでいいのか駄目なのか分かんねェ!!! 「行き場のない、不安を抱いている目だった」 「……あー、まぁ、確かに行き場はなかったですけどね……」 絶対新撰組が保護してくれるって思ってたのに、土方が用は終わったからどっか行け的な感じで追い出すから路頭に迷ってたんだよねマジで。 なのに何で監察方は私を追って来てたんだよ……矛盾してんじゃねーか。 「……それに、新撰組に追われていたという事は、少なくとも新撰組の味方ではないという事だろう?」 「え、いや、それは決めつけちゃ駄目な気が……」 「伊達は長州の敵なのか?」 「あ、いやー……」 入江さんの方が捨て犬みたいな目ェしてますけど!!! 何か私が悪い事したみたいじゃん!!! いやだって、実際に味方とか敵とかないじゃん私。未来から来た訳だから。 あ、ただアレだ。高杉だけは私の敵!あいつは許さん! まだ肩めちゃくちゃ痛いんだからなァァァ!!! 次会ったら一発ぶん殴る。
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