当初の目的を忘れたら終わり

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「伊達ちゃん」 「あ、はい」 吉田さんを哀れんでいたら、久坂さんに肩をつつかれた。 「これから俺が訊く事に正直に答えてくれる?」 「あー…、まぁ、内容によりますけどね。……出来るだけ正直に答えます」 「うん。じゃあ、伊達ちゃんは何処の出?」 「奥州です」 ……あれ、奥州で伝わるよね? まだ県名はないから、宮城じゃ伝わらないだろうし、ちょっと古くてもいいから奥州でいいだろ。うん。 ……言ってから考えるのも何だけど。 「奥州で伊達って事はもしかして……」 「はい。伊達政宗の末裔です」 「そっかー。あの独眼竜の末裔か……」 久坂さんが笑顔を浮かべながら呟いた。 んん?信じてくれんだ? 「じゃあ次。伊達ちゃんは何で京に来たの?」 「それは……」 何でって訊かれても理由なんてなくね!? 本当の事を言うならトリップしたからなんだけど、そんなん信じてもらえる訳ないし!!! 「言えない?」 「……強いて言うなら観光ですかね」 「成程。目的は言えないか」 「いや、目的を言えないんじゃなくて、目的がないんです」 何でトリップしたのか、そもそも何でトリップ先が幕末の京都だったのか。 まだ私にも分かってないのに他人に言える筈がない。 しかも何か幕末だけど幕末じゃないみたいだし。 あ、アレだ。所謂パラレルワールドってヤツだな。 それなら色々と説明がつく。 「訳ありって事だね、伊達ちゃんは」 「まぁそんな感じです……」 あははー、と苦笑しながら頭を掻く。 因みに後頭部に鋭い殺気を感じてますさっきから。 あーもう吉田さん!!!マジでしつこいんだけど!!? 吉田さんはねちねちタイプか!ねちねちタイプかコノヤロが!!! よし!呼び捨てしてやろうか吉田ァァァ!!! 「確実に失礼な事考えてるだろお前」 「べ、べっつに~?全く考えてませんよー?」 お、おふぅ…、吉田さん怖ェ……。 呼び捨てすんのやめよ……。 だって瞬時に睨んできたもの。読心術でも出来んのか吉田さんは。 「……はぁ。九一も玄瑞もあてになんねェ。ンな生温い質問してんじゃねェよ」 「酷い言われ様だね」 「全くだ」 ……あれ、何か内部争いが勃発しそうじゃねコレ。 じゃあ内部争い勃発したらその隙に逃げようそうしよう!!!
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