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塀の近くに物が積んであれば、それを踏み台にして塀を越えられる。
そういう方法は幼い頃に叩き込まれた。
私は女だけど、紛れもなく伊達家の人間なんで、武術、剣術、体術等を習得させられている。
おっ、前方に山積みになっている薪を発見!
あれだけ高く積んであれば余裕だな!
「そっちは行き止まりだぜ?」
「んふふ……私を嘗めんなよ?」
高杉が勝ち誇った様な口調で言ってくるもんだから、私は高杉の意表をつけると確信。
あの言い方からすると、高杉は私が薪を足場に塀を越えるなんて思ってないみたいだからな。
塀に近付いて行くにつれて、ぐん、と走る速度を上げる。
そんでもって薪の山に飛び乗って、更にそこから塀の上に飛び乗った。
無事に着地してから後ろを振り向くと、何故か高杉がニヤリと笑った。
「はっ、随分と身軽だな。猫みてェじゃねーか」
「猫って……私は人間だ!!!」
入江さんには犬に例えられて、高杉には猫に例えられた。
何か複雑な気分だよ。
と、高杉は喉の奥でくくくと笑うと、半歩下がってそこからダッシュ……ダッシュ!!?……うん。ダッシュをして、私と同じ手を使って塀の上に着地した。
……Σマジか!!!
「俺には出来ねェって思ってたろお前」
「……図星だよ」
くそぅ、これからどうすればいいんだ?
ちらりと塀の下を見て考える。
塀から降りて、道も分からずに暗い道を逃げるか、それとも高杉と和解するか……いや和解は無理だな。
高杉がチャキッ、と刀を構えたのが目の端に映り、私は高杉に視線を戻した。
「お前を逃がす訳にはいかねェんでな」
「何で。一体私が貴方に何をしたっての」
「あ?……見ちまっただろうが、オメーはよ」
「は?」
本当に意味が分からない。
私は真面目に何も見てない。
なのに一方的に私が何かを見たと決め付けるとか……マジでふざけるな!!!
そういう気持ちが私の内部で大爆発した。
「お?殺り合うか…?」
私の内部から溢れ出た怒りは、殺気という形で外部に流れ出た。
高杉はそれをいち早く察知し、間合いをとりながら私を挑発してくる。
でも私、脳内は冷静なんだよ。
ここで高杉と殺り合うなんて馬鹿な事はしない。
今私がするべきなのは、高杉から逃げる方法を考える事、ただそれだけだ。
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