槻谷純夏

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会社を辞めて次の日、私は会社に行こうであろう玲二を見送った後、この精神病の原因であろうあの日の事について、何故だか向き合う気になれた。取り分け興味がなかったから考えたくもなかったが。 所で私は十歳の時、ダンプカーに跳ねられ、もう二度と目を覚ます事はないと言われた。冗談抜きで。 居眠り運転をしていたらしい運転手は、そのまま自らの命を絶った。 幸い、というか医者とその取り巻きは奇跡と騒ぎ立てた。私は目を覚まし、歩けるようになり、言葉も話せる。字も書けた。 事故に遭ってから私はたくさんの人に抱きしめられた気がする。 ママはずっと感謝の言葉を述べていた。どうやら一人娘が事故に遭おうが跳ねられようがなにも奪われずなにも失わず生かせてくれた神とか仏とかに。 ただ、事故に遭って目が覚めて数日が経った頃、私は物凄い悪寒と身体に大きな穴があいた感覚に襲われていた。十歳ながらになにか嫌な予感もした。 しばらくして機械のようなものに入れられ、テストされ、全身の検査をした。 記憶を失った訳でも無く、内蔵も脳も全く異常がなく、学習能力にも異常は無く、ただ「多・少」の骨折等のリハビリだけが必要となった。
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