槻谷純夏

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夏だか秋だか分からない季節は、少しだけ私の足取りを速くさせた。季節のせいというよりかは本能的に家に帰らねばならないと私自身感じたのだろう。 博多も飽きてきた。 いくら旦那が訳あって東京の人だろうと訳あって地元がここだろうと、もーそろ飽きてきたぞ。 旦那とたった二人暮らしなのにムダに広いあのマンション(3LDK)も、あいつも大っ嫌いだけど何故かいつも私は早く家に帰らなければならない気がしていた。それもここ最近。本当に最近だ。 走った。 私は走った。 なんかいつの間にか走っていた。 階段をかけ上がりいつもの重いとびらに手を触れて力を込めればいつもの景色が広がる。 そう強く願っているのだ。 私はマンションの扉に恋をしたのだ。きっとそうだ。そうなのだ。 ただ、一つ、恐れていた事が実現している事は秘密だ。
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