異動~勝原真二

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いつになっても雨が止まない。昨日なんか悪いことでもしたかな。ある建物、エレベーター内。入ってきたときに一応タオルでスーツを拭いたのだが、まだぬれているようだ。一緒に乗っているのがお偉いさんではなかったら、もっと派手なため息をついていただろう。 エレベーターが3回で停まる。軽くそのお偉いさんに頭を下げながら、エレベーターを下りる。この三年間歩き慣れた廊下を通るが、ここ2週間は途中で曲がり、奥の孤立した1つの部屋に入る。 「おはようございます!」 元気な挨拶は現代社会の基本だ。まぁ、ここではあまり意味がないのだが、、、 「おはよっ」 「おう」 「どうもです」 先輩たちは適当にしか挨拶を返さない。実際こんなもんなんだろう。 自分の席につき、人数が揃うのを待つ。だいたいオレが来るのが最後から2番目。最後に来るのは決まっている。 エレベーターのわずかな音と、直後に聞こえる小走りの音。これで揃ったな。 「じゃあみんな揃ったな」 上司も大分慣れたようだ。 「すいません!また私が最後ですか?」
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