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純潔よりももっと大事なものをこれからマナ、君は僕に汚される。
──それは魂の尊厳。
ねぇ。可愛い可愛い、赤ずきん。きみは狼の誘いに乗るべきじゃなかった。
だからほら、一口でぺろり。
こんなに簡単に食べられちゃう。
この場所に、きみを助けてくれる猟師さんはいないのに。
だから、悪い狼は食べ放題さ。好きなだけ食い散らかしてあげる。……僕がこの子に触れた場所から注ぎ込む魅了の魔力は、きっとよくこの子に馴染むだろう。
この子は僕の魔力と相性が良すぎたからね。きっといま、すごく気持ち良くてたまらないはず。
それこそが、この子の悲劇。
魔力とはニンゲンにとって第二の血液のようなものだ。魔力回路は血管みたいなものだ。それは全身を巡って、──替えがきかない。
それを魅了の魔力で汚染されたら、どうなると思う?
とろりと蕩けたマナのうなじに、僕は最後の仕上げとしてやわく口づけてソレをマナの魔力回路に流し込む。
びく、っと大きく、一瞬だけそれを拒むようにマナの躯が撥ねたけれど、それも最後の抵抗。
ああ。駄目押しが必要かな?
どうしようかな、と一瞬迷ったその間に──あ。堕ちちゃった。
「……可愛い、ね?」
くたり、としどけなく横たわり、荒い吐息を繰り返すマナに、ようやくうなじから唇を僅かに離し、けれど吐息はまだ感じられる程度の距離で、そう囁いた。
──ああ、でももう聞こえてないかな?
それがわかっていて、僕はこうしたんだから。
ご馳走様、赤ずきん。
──この子はもう、僕の虜。
うん。……これでようやく、今回の遊びの駒が仕上がった。
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