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いでくれ」 「分かってます。でも、まだ大丈夫です」  既に、マガジンを三つ消費していた夜空はデザートイーグルの反動に顔を顰めながら、そう言った。というのは、撃つのをやめたら、殺される。そういう考えがあったからだが。  その後、日が昇り始めたため、吸血鬼が乗っているであろう車は姿を消した。どうやら、本当に太陽が苦手みたいだと夜空は一人納得していた。 「……夜空君」  走らせていた車を停車し、キャンベルは震えた声で夜空に言う。 「はい?」 「君は、無茶をしすぎだ。今回はうまくいった。助かったけれど、今のままだと、君は破滅しかねない。自分の年齢を考えてくれ。立場を弁えてくれ。君はまだ、子供で、守られなくてはいけないんだ。それなのに、どうして自分から踏み込んでいくんだ?」 「……?」  夜空には、キャンベルの言っていることが理解できなかった。どうして、この人は、初対面の自分に対して、親のようなことを言っているのか。もっとも、こんなことを両親に言われたことのない夜空にとっては少し嬉しいことでもあった。 「夜空君。約束してくれ、私が君を守る。だから、絶対に無理をしないでくれ」  すがりつくように、夜空の肩をつかみ、言い寄るキャンベルに、夜空は半ば押されるように頷いた。 「……分かりました」  このときはそうとしか言えなかった。キャンベルの目がそう言えと言っているように、夜空には見えたからだ。しかし、当の本人は、そんなことを微塵も考えていない。  それから、車を走らせて、教会への道を急いだ。だいぶ、近くまで来ていたのか辿り着くまでにはそう時間はかからなかった。
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