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ことは残念でした」  口を開いた男は随分と形式的な口調で言葉を発する。そんな目の前の男に、夜空は苛立ちを覚えた。 「あなたが、神父様?」  自分の存在をアピールしようと、キャンベルに代わり、男に問う。 「おや、この子は誰かな、ミス・キャンベル」 「質問をしているのは、僕ですよ」  子ども扱いされることよりも、自分を無視していることに夜空は腹を立てた。 「おや、これは失礼。君の言うとおり、私はこの教会の神父だ。さあ、君の質問には答えた。次は私の質問に答えてもらおうか。君は一体誰なのかな?」  やんわりとした笑顔で再び夜空に問いかける男。その態度に、夜空は不信感を抱かずにいられない。 「月影夜空」  短く端的に名前だけを告げるが、それだけで十分だったのか、男はなるほどと呟いた。 「君が例の息子さんか。君のご両親には私も世話になった」  懐かしむように男はそう口にした。けれど、夜空はどうでもよかった。そんな夜空をよそに、キャンベルは話を進める。 「神父様、報告したとおり、この子を保護していただきたいのですが」  キャンベルの突然の申し出に、夜空は驚いた。そんな話は聞いていない。安全な場所へ連れて行くというのは伝えられたけれど、これは話が違う。そんな夜空の胸中など気にも留めず、大人の二人は話を進める。 「ええ、承知しています。月影夫妻がこの世を去った今、この子に身寄りはありません。私が責任を持って引き取りましょう」  台本どおりに話しているような、やはりどこか形式的な口調だ。キャンベルの方は、車内でのやり取りで幾分か、信用してはいたけれど、目の前の神父はどうにも胡散臭かった。 「夜空君、だったね。これから、君は私と一緒に
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