003

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聞き流す。 「大人とかそんなん関係ねぇ。あたしはこいつが気に入った。よく見ろよ。星空と夜美にそっくりじゃねぇか。こんな奴をみすみす胡散臭い神父に渡すのはもったいない」  未だ夜空を抱きしめたまま鑚崎は横目で神父を見る。 「胡散臭くて悪かったですね」  そんな様子を微塵も感じさせず、神父は口を開く。 「ところで『回収』のほうはどうだったんです?」 「あん? ああ、ちゃんと『回収』してきた」 「そうですか。では、確認に行きましょう」  神父はそういい残し、建物から出て行く。 「あの、鑚崎さん? 『回収』ってなにを回収してきたんですか」  自分の頭に顎を乗せている鑚崎に、夜空は問いかける。 「うにゃ? ああ、一応、そこの女が見捨ててきたお前の両親の死体だよ。餓鬼のお前は見ないほうがいいと思うぜ。あれはもう人の姿をとどめちゃいない」  常人から確実に気が狂うな、とニヒルに笑い、ようやく夜空から離れる。 「ちょっと、鑚崎、何を言って」  キャンベルはさすがにまずいと思った。いくら夜空が子供離れしているとはいえ、さすがに両親だった死体を見るのだけは阻止しなければと思った。だが、その抗議ですら鑚崎は片手で制する。 「お前は黙ってろ、イリア。こいつはまだ両親の死を信じられていない。こいつにはそれをしる権利がある」  そう言って今度は正面から夜空の肩を持つ。 「お前が見たいと言うなら、あたしは止めはしない。イリアがなんと言おうとあたしが許可する。ただ、覚悟を決めておけ。あれを見たらお前は確実に日常に戻れない。さあどうする?」  選択肢はあってないようなものだ。どちらにしろ、夜空はもう今まで通りではいられない。一夜にして両親を失ったのだから、これまでのように
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