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の国の言葉が使えたため、コミュニケーションに困ることはなかった。
そんな夜空はすぐにクラスメイトと打ち解けることができた。外国人ということもあり、興味本位で近づいてくる生徒も多いのもあるが、夜空は昔から人見知りをしない子供だったので、自分からクラスの輪に入っていき積極的に関わりを持とうとしていたのだ。たとえ、短い間しか過ごせなくとも。
夜空にとって、両親は絶対だった。躾が厳しいとかではなく、単純に夜空がそう思っていただけだけれど、忙しい両親のことを憎く思ったことは一度もなかった。
それは両親が死んだ今でも代わらなかった。
その日、夜空が学校から帰ると、珍しく両親が家にいた。家といっても、マンションを借りて暮らしているのだけれど。
「どうしたの? 今日は仕事じゃないの?」
十三歳の夜空はこの歳にして周囲の子供よりは少し精神的に大人びていた。あくまで、その年代にしてはだが。
両親の返事がないことに、若干の違和感を覚えた夜空だったが、最近働きづめで疲れて寝ているのだろうと思い、特に気に留めなかった。
「宿題でもして、夕食を用意しておこうかな」
忙しくて家にいないことの多い母親は夜空に料理の基礎を教えて、自炊するように教育していた。だから、小学三年生から、今まで基本夜空は自分の食事に加えて両親の分も作ってきた。最初こそ、なれない料理に手間取っていたけれど、今となっては手馴れたものである。さっさと宿題を終わらせて、夜空は夕食作りを始めた。
「こんなもんかな」
一通りの料理を作り終えて、両親の様子を見に行くことにした。
「お父さん? お母さん?」
寝ているのかを確認するため、小声で呼びかける。静かな部屋の中で、両親の寝息と呼吸で布団が上下しているのが見えた。
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