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暮らすことはできないだろう。 「…………」  それでも夜空の答えは決まっている。両親が死んだというのなら、それを確かめなければ行かなかった。たとえ、原型を留めていなくとも眼に焼き付けておかなければならない。だから、夜空は迷いなく言う。 「構いません。両親に合わせてください」  その言葉に鑚崎は満足げに微笑し、夜空を抱きしめる。 「いい覚悟だ。それに、いい眼をしている。お前はいずれ、世界を変える鍵になるかもしれない」  言って、夜空を開放し外に連れ出す。 「お前がそう言うだろうというのは分かっていた。じゃあ、これからどうする? 似非神父と暮らすつもりはないんだろ?」 「ええ、できれば、一緒にはいたくないです」 「ふふん、正直な奴だな。嘘がつけないタイプか? それとも、わざと振舞っているのか? お前はどっちだろうな。まあ、あたしにはどうでもいいけど。これからはもう少し、本音は隠した方がいい。本音はお前の弱みになりかねない」 「隠してますよ。ただ、貴女には本音を話しても大丈夫だと思ったんです」 「ふふん、自分の感覚を信じるその姿勢は買ってやるけれど、あたしのことも信用するな。つーか、他人は基本疑え。何も考えていない奴でも警戒しておけ。そういう奴に限って何をするか分からねぇぞ」  とキャンベルの車が停めてある辺りまで来たところで、夜空はブルーシートに包まれた二つの物体とその近くで佇む神父を発見した。 「さて、そろそろお前の両親とご対面だが。もう一度だけ聞く。日常に戻れなくて、本当に良いんだな?」  先ほどよりも真剣な表情で、夜空に訊く鑚崎。それに対して夜空はそっけなく「はい」と答えるだけだった。 「後戻りはもうできませんから」 「ふふん、いい覚悟だな。だが、今はそれを飲み
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