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込んでおけ。そのうち、嫌でも吐き出さなきゃいけなくなる。そんときまでとっとけ」
「どういう意味ですか?」
言っている意味が分からず、鑚崎に問いかけるも、
「いずれ分かるさ」
と鑚崎は言葉を濁した。これ以上は期待しても答えが返ってきそうにないので夜空は追求するのをやめた。
「んじゃ、まあ、ご対面といこうか」
「はい」
夜空が返事をするのを待って、鑚崎はブルーシートを捲る。
そこにあったのは、人間二人分の肉の塊だった。
「…………」
「おい、なんか感想はないのか?」
怪訝そうに、鑚崎は夜空の顔を覗き込むが、夜空の表情は先ほどとは変わりなかった。
「感想と、いうか、これがお父さんとお母さんなんですか?」
未だ、信じられずにいる夜空がそう言ったのに対し、神父が口を開く。
「これが君の両親であることは間違いありません。ほら、肉片の中に、銀時計があるでしょう。そこに君の名前が刻まれています。これをもっているのは月影夫妻しかいません」
夜空は何の迷いもなく肉片の中から銀時計を取り出した。確かに銀時計にはTUKIKAGEYOZORAと大文字で彫られている。その銀時計には見覚えがあった。両親が自分の生まれたときの話をしたときに、見せてくれたものだ。かなり、高価なものだというので、成人を迎えたらもらう約束をしていた。
「確かに、両親が、持っていたものです」
このときに、夜空の中にあった「両親が生きている」可能性は限りなく0に近づいた。最後の希望である、この肉塊が別人のものであるという可能性がないこともないけれど。そうである可能性は限りなく低い。なにせ、両親しかもっていないものをこの肉塊は持っていたのだから。
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