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「お休み、お父さん、お母さん」
この日、夜空は両親の顔を見ることがなかった。
「…………」
真夜中。時間にして、一時を過ぎたあたり。夜空は、目を覚ました。
「?」
自分がどうして目を覚ましたのか、分からず、困惑していると、不意に両親のことが気になった。
「お父さんたち、もう起きたかな?」
吸血鬼ハンターである両親が活動し始めるのは日が落ちてからだ。両親が起きていれば、自分の作った料理を食べているだろう。
「……喉、渇いたな」
夜空は喉を潤すために水を飲みに台所へ行き、コップに水を汲んで一気に飲み干す。その後で、特に意味もなく、冷蔵庫を開けて中を覗いた。
「お父さんたち、食べてないな」
冷蔵庫の中には野菜や肉などの食品と、夕方夜空が作った料理がそのまま残っていた。
別段、特別なことでもなかったのだが、この日はどうもいつもと違う。普段なら、夜空が絶対に起きない時間に目覚めてしまった。
「様子を見てみようかな」
そう思ったとき、玄関のドアが叩かれる音がした。インターホンがちゃんとついているのにと思いながら、夜空は玄関に向かう。
「こんな夜中に、誰ですか?」
と、当然のように日本語で言ってしまったあと、はっとしてすぐに英語で言い直す。当然、ドアの向こうから帰ってきたのは英語だ。
「……夜空君か? ドアを開けてくれ、お父さんとお母さんが大変なんだ!」
玄関の向こう側から聞こえたのは知らない女性の声だ。
「え?」
料理が残っている以上、両親は部屋で寝ているはずだ。なのに、どうして大変なんだ。
「す、すぐにあけます」
ガチャリと鍵を開け、ドアを開くと、そこには血だらけの女性が立っていた。
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