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「駄目でしたか?」
「いや、問題ない。むしろ、着替えてくれてよかった。動きやすいに越したことはないからな」
キャンベルはつくづく夜空の思考に違和感を覚えてならない。「どうして、この子はこんなに頭が回るのか」と、そんなことを考えてしまう。
「じゃあ、行こう。荷物はそれで良いのか?」
「ええ、特に必要なものもありませんし」
夜空が持ってきた荷物はリュックサックにつめられている。何着かの着替えと下着。財布に携帯。両親が「もしものときに持っていくように」と言っていた、銀行口座のカードと通帳だけだ。
マンションを出た二人は、キャンベルがここまで来るのに使ったであろう車に乗り込んだ。
「あの、こんなこと言うのは変かと思うんですが、言ってもいいですか?」
「あ、ああ、言ってくれ」
助手席に座る夜空を横目で見ながら、耳を傾ける。
「両親の、死体とかって、どうなっているんですか?」
「……気になるか?」
「ええ、一応。聞いただけではいまいちピンとこないので」
「なるほど、さっきまでの落ち着きようは、両親の死を実感していないからか」とキャンベルは少し安心した。安心してしまった。少なくとも、普通の子供だと思ってしまったのだ。
「ご両親の遺体がどうなっているのかは、私にも分からない。君の元に向かうのに必死になって、気に掛ける余裕がなかったんだ」
「そうですか……大事にならないといいですが」
「奴らがそんなへまをやらかすとは思えない。おそらく、両親の遺体は奴らに処理されている可能性が高いかもしれない」
「そうですか」
「すまない、君には酷な話だと思う」
「いえ、気にしないでください」
「…………」
どうしてそう、無関心でいられるのか、キャン
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