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ベルには理解できなかった。けれど、これが夜空の本来あるべき姿なのだ。両親の遺体を見ていない。両親の死を完全に信じたわけではない夜空にとっては、当然の反応である。
「……ところで、いまさらですが、あなたは本当に、両親の知り合いなんですか?」
「……本当だ」
「証明できますか?」
「…………」
「今この状況で、こんなことを訊くか?」とキャンベルは口には出さずそう思った。
「どうなんですか?」
夜空はキャンベルを見ずに、フロントガラスだけを見てそう言う。もし、仮に、キャンベルが両親の知り合いでないなら、夜空は至極危険な状況に置かれている。
「証明はできない……だが、信じてほしい。私は君の味方だ」
熱意を持って、とはいかないが、疑われたままではいざというとき、危険が付きまとう。それをキャンベルは分かっていたし、夜空も理解はしていた。
「……分かりました。……信じましょう。まあ、両親と連絡が取れないということは、あなたの言い分を信じるしかないですね」
「いつの間に、連絡を?」
「荷物をまとめているときに、携帯で……。あの状況では、あなたを信じきることはできませんでしたから」
かと言って、完全にキャンベルを信用してはいない。両親と連絡が取れなかったのは本当だが、着信に気付いていない場合も考えられる。今はまだ、疑いを捨てられないと、夜空は考えていた。
そんな夜空に、キャンベルは若干の恐ろしさを感じていた。力だけなら、吸血鬼と戦うことを専門にしている自分の方が強い。だが、この子供は頭が切れる。キャンベルを敵だと判断すれば、間違いなく、知恵と知力で自分を排除しようとするだろう。
「夜空君、君は喧嘩をしたことがあるかい?」
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