一、ロビン・ウォルタナの後悔

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 考えふけっていると、酒場の中心からどよめく声が聞こえてきた。  何があったのかと思い、そちらの方に目を向けると、鎧を身に纏った女性四、五人の姿が騒ぎの中心にあった。  彼女たちは言った。 「従僕ども、汚れた手で我らに触れるな」  直後。  鮮血が舞い、肢体が吹き飛び、それまで人の形を成していた者が物に変わる瞬間を僕は見た。  たびたび戦場に出兵していた僕には聞き覚えのある水気を含んだ鋭い残響。  彼女たちの手には今でこそ何も握られていないが、腰から下げた剣を掴み、刹那に抜刀する所作は並みの技術ではままならない。  耳の奥に残る斬撃音。  斬撃音というのは刃を振るう人間によって違うものだ。  僕はこの斬撃音を、どこかで聞いた覚えがある。 「こうなりたくなくば気安く触れぬ事だ。もっとも、お望みとあらば切り刻む事もやむなし」
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