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女性の中の一人、僕と同じ銀髪の女と目が合い──瞬間、煮沸した感情が腹の底に湧き、一気に脳髄まで駆け上がってきた。
頭蓋が熱い。
呼吸が乱れる。
全身がざわめく。
この感情が『憤怒』だと判断するのに時間は掛からなかった。否、この怒りを忘れるわけがない。
何故ならあの銀髪の女は、僕が殺したいと願っている女だったのだから。
煮え滾る感情が捲し立てるように頭蓋まで押し寄せ、僕は、次の瞬間には女の懐に飛び込んでいた。人垣のバリケードを押し退け、女の名前を叫びながら。
しかし、振り上げた拳は届かない。
その場にいた女の仲間に取り押さえられ、地に伏せられたのだ。
そんな僕の姿を見て、銀髪の女はまるで興味がなさそうに鼻で笑い、捨て台詞を吐いて酒場から消えて行く。
「──ふん。宴は終わりだ。全員牢へ戻れ」
なす術もなく独房のような部屋にぶち込まれたのは、そのすぐ後だ。
◇・◇・◇
側頭部が痛い。
薄い布切れ一枚と台座があるだけの狭い部屋に投げ込まれた際、床や壁に頭をぶつけてしまったらしい。
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