一、ロビン・ウォルタナの後悔

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  ◇・◇・◇  僕は死んだ。  比喩でも何でもなく。ただ事実として。  ……あと少しだった。  ふざけた絵空事から救う事ができたはずなのに。  たった一人の肉親を守る事ができたはずなのに。    全ては、ブリュンヒルドと言う名の女の登場から狂い始めた。  彼女は言った。  戦乙女という自身の立場上、これより先に起こりうる『神々の黄昏』に勝利するためには女神の覚醒を促す必要がある。したがって、カサドレア国のニーナ姫の魂を拘束する。と──  言っている意味が理解できなかった。  『神々の黄昏』とは何なのか。  女神とは何なのか。  ただ、これだけは分かる。彼女は利己的な思想の下、ニーナ姫の命を奪おうとしているのだと。  そしてそれは、無情にも遂行された。  僕の目の前で。眼前で。目下。鮮血に塗れた。肢体。寸断。  それはもはや***ではなく。     面影も香りも****も消え失せ。  単なる**********の*で。  ──認めない  聡明で綺麗だった***とは別の。  ──認めない  透き通るような*は、もう永遠に。  ──認めない  僕はブリュンヒルドが住まうという天空に一番近い山に登った。道は険しかった。だが、体中を駆け巡る憤怒が僕を駆り立てた。そして頂上に到達し、僕は彼女と相見えた。
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