一、ロビン・ウォルタナの後悔

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 対峙した瞬間、体中の血がざわつき、自分の身体が更に高熱を帯びていくのが分かった。  僕の姿を見、驚愕する彼女の表情が印象的だったが雌雄は一撃の下に決した。  雷光。  戦乙女ブリュンヒルドが扱う神速の槍が僕の心臓を穿ったのだ。  胸部を抉られた直後の記憶は曖昧だが、魂の奥底に灯った業炎は、消えはしない。  ──殺してやる。  それが、僕が一度目の最期に放った言葉だ。  他の誰にでもなく、ニーナ姫を殺した張本人へ──たった一人の妹を殺害したブリュンヒルドへ向けて。  妹には確かに、生まれ持った不思議な力があった。  ニーナが歌えば動物たちはまるで仲間であるかのように寄り添い、負傷した者に手をかざせば瞬く間に傷が治癒していった。微笑めば誰しもが笑顔になったし、そばにいるだけで心が安らいでいった。  しかしニーナも人間だ。  国の政治に頭を悩ます事もあれば、戦死者の墓前で自分の不甲斐無さに打ちひしがれている事もあった。国を治める自分がもっとしっかりしていれば、と。  悔やまない日などなかった。人々の死を悼み、涙を流す心優しい奴だった。  なのに──  何故だ? 何故ニーナが殺されなければならない? 妹が何をした。一体なんの理由でこんな事になっている。  僕は、死してもなお猛り続ける灼熱の思いを仇敵に向け続けている。
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