四、火焔

2/8
前へ
/48ページ
次へ
 甲高い金属音が蒼穹に鳴り響いた。  叩き付けられた剣戟は、重い。受け止めた瞬間、足が地に沈み、殺し切れない衝撃が腕を伝って身体を直下していった。  はからずとも、受け止めた無銘の大剣が破断しなかった事に疑念を抱いてしまう程の強烈な一撃。もしもあと刹那でも見切りが遅れていたら、双眸に宿った光は失われていただろう。    およそ女が振るう力ではない。  つい数分前まで兵士でありそして奴隷であった男は、交えた剣の先にいる鎧纏いの女を睨みつけながら改めて彼女たちが振るう膂力を呪った。  戦乙女(ヴァルキリー)。  眉目秀麗。明眸皓歯。 輝く麗髪をなびかせ、瞳に碓氷を宿し、神の意志を以って戦場を駆る凄女。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加