Running Shot

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 午後の授業が始まってからも望はさっき麗奈が言っていたことが気になってしょうがなかった。  それどころか、周りの席でのひそひそ話の話題が余計に気になってくる。  「つまり、ボイル・シャルルの法則というのは……」  何やら重要な項目を話しているようだが、全然頭に入ってこない。  既に周りも話題を切り替えて雑談が支配しかかっている。  おかげで何をひそひそ話しているかわかってきた。  「そういえばこの間の騒ぎのことなんだけど」  「何かしたの?」  「ネットに呟いたら、なぜかしばらくしたら勝手に消されてたのよ。それも何度やっても消されてる」  「知ってる、私も呟いたけど消されてた」  呟きが勝手に消されてるという女子生徒の会話の傍ら、一方でオタク風の集団も似たような会話を繰り広げていた。  「それで、アニメな話がリアルになったことを3chに書いて色々議論して続きを翌日にしようってことだったんだ」  「そしたらスレごと消えてたんだろ、みんな知ってるよ」  「それいつの話?」  「あれ、次原くんも気になる?」  「こないだの怪人騒ぎを話題にしたんだけど、すごい盛り上がったんだ。それに、最近ノゾミさんがインしてこないのも関係あるんじゃないかって話もあるんだ」  「そ、そうなんだ……」  突然の話題の切り替えに望は少し冷や汗を流しつつも受け答えておいた。  事実、望は怪人騒ぎがあってから関係を疑われないよう、ゲームにログインすることをしばらく控えていたが、むしろそれが今回の事件との関係を疑わせる要素になってしまったらしい。  「でも、インしないのは都合とかも関係あるんじゃないかなぁ」  「そうなんだろうね、考え過ぎなんだよ」  「みんなこの間の事件で話が盛り上ってるところ悪いけど……」  突然の咳払いにクラス全員の私語が止んだ。  その様子を認めると、麗奈は望に視線を合わせた。  「今日言ったことは全部テストに出すわよ。次原君、さっき言った式を言ってみて」  「僕、ですか……?」  結局、指名された望は完全に困り果ててしまった。  「え、ええと……、その……」  「もういいわ、座りなさい」  テンパってフリーズした望は混乱したまま着席した。  「今日やったことは次回テストにするから、覚悟しなさいね」  その宣告は既に届いていなかった。
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