DAYBREAK

2/13
前へ
/32ページ
次へ
 大量の木が不規則に並ぶダンジョン……  いつ敵が襲ってきてもおかしくない雰囲気の森を魔導師の少女とその一行は歩いていた。  『それじゃ、ここからは危険な相手が多いから気をつけて』  『がんばりまーす』  『よろしくお願いしますね』  『ノゾミさんについてけば大丈夫だからね』  『とにかく、ボクがギリギリまでダメージを与えるからみんなはとどめを刺してね』  ノゾミと呼ばれた魔導師の少女は一行のメンバーに一声かけると先頭に立って歩き出した。  彼女の装備は基本的な物を持っている他のメンバーと違い、高級そうな宝玉などがあしらわれた防具や他では手に入らない特別な素材でできた杖を持っている。特にその杖は彼女を象徴するものであった。  よほどの悪名がついてない限りパーティーの誘いも断らず、それに加えて有用な呪文を覚えている。さらには小柄な体型に鮮やかなオレンジのサイドポニーの髪という万人受けする容姿に誰もが魅かれ、初心者に対しても親身に接する性格も手伝っているのか、彼女はこの世界で抜群の人気を誇っている。  そうこうしている間に一行の目の前に早速敵が現れた。  相手は盗賊のグループであるが、場所が場所だけに結構強い。  『痺れろっ、スタン!』  ノゾミが杖を振り上げると同時に盗賊達に電撃が降り注ぐ。  電撃を浴びた敵はとたんに痺れ、ある程度の体力を残して固まる。  『今のうちに、早く!』  『とどめの一撃っ!』  『経験値、経験値!』  『よっしゃぁ、レアアイテムゲットぉ!!』  一気に攻勢に出た他の仲間をノゾミが見守っていると、突然の彼女の身体が一瞬ブレると同時に周りに砂嵐のような音がその場に響いた。  『え、今のって!?』  『ごめん、またノイズみたい』  『なんか、今日はノイズにやられる回数多いみたいですね』  『今日はもう切り上げます?』  『だ、大丈夫だから』  『心配してるんですから、今日は休んだ方がいいと思いますよ』  『そう、それなら……』  仲間の提案を受けて、ひとまず一行は安全な街まで戻ってその日の冒険を終えた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加