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「ほれ、奢りだ。飲みな」
「あ、ありがとうございます……」
砂浜から移動した一行は公園の休憩小屋にいた。
いきなり割り込んで、あっという間に敵を片付けた革ジャンの青年は望とつばめに近くの自販機で買ってきたコーラの缶を投げ渡した。
一方の走り屋連中も各々買ってきた飲み物を豪快に飲み交わしている。
「じゃあ、いただきます……」
「おぅ、足りなかったらまた買ってきてやるよ」
「うゎっ!?」
「きゃぁっ!?」
缶を開けたとたん、缶から吹き出したコーラが二人を直撃する。
その様子と青年のどや顔に走り屋連中も腹を抱えて笑いをこらえていた。
「まさか素直に引っ掛かるとはな」
「最高っすねぇ!おい、誰かタオル持ってきてやんな」
「ひどーい、振ってあったなんて!?」
「古典的な悪戯だぜ?今どき引っ掛からないほうが普通じゃね?」
まさかの悪戯に憤慨しているつばめの横で望は素直にタオルを受け取って顔を拭いていた。
その様子が何か気に食わなかったのか、青年は望のもとに移動してきた。
「ったく、シケたツラしてんなよ。もう少し緊張解いてくれたっていいじゃんか、次原望君」
「えっ、僕のこと……」
「おいおい、おたくと俺は前に一度会ってるんだぜ?3年くらい前に横浜で」
「?」
「ま、覚えてないなら仕方ないか……」
そう言って、青年はジャケットのポケットからライターを取りだし、タバコに火をつけた。
その様子に何かを確信したつばめは意を決して青年に訊ねた。
「あの、つかぬことを訊いてもいいですか?」
「ん、なんだい?」
「もしかして、あなたってロック歌手の高中翔(たかなか しょう)さんですか?」
「ああ、そうだけど?」
青年はあっさりと答えた。
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