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「……、午前中に来るのも久しぶりだな」
エレベーターから降り、高中翔は一息ついた。
エレベーターホールにいる翔の目の前には
『新東京セキュリティ』
『受付→』
の看板がかかっているが、あえて無視して翔は反対方向に向かう。
『通用口』と書かれた扉の前でカードを取りだし認証させると、電子音とともに鍵が開く。
そのまま扉を開けようと手を掛けた瞬間、いきなり開いた扉の角が翔の眉間を直撃した。
「痛っ………ってぇ!?」
「ぁ?誰かいたのか!?」
その言葉とともに一人の男が顔を出す。
男は顔を押さえている翔に気づくと驚いた様子で声をかけた。
「何だ、お前か珍しいなこんな時間に」
「酷いっすよ、岸田さん。青タンできたらどーすんですか!?」
「悪ぃ悪ぃ、俺の落ち度だ」
部屋から出てきた一昔か二昔前の刑事ドラマの主人公を思わせる渋い男――岸田勇次(きしだゆうじ)が苦笑しながら翔に謝る。
「だがしかし、扉の動きには注意ってやつだな」
「……確認しないでいきなり開けるあんたが悪い」
「何か言ったか?」
「いや、全然?ところで本部長来てます?」
「ああ、部屋にいる。それと、半から会議だってよ」
「りょーかい」
そう言って翔と岸田はそれぞれの行き先へすれ違って行った。
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