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扉を抜けると、そこにはいくつものデスクとそこに座って作業している人物達がいる普通の会社によくある風景が描かれている。
翔はその風景を横目に見ながら奥にある部屋に向かって通路を歩き始めた。
いくつかのドアを右手に見て進んでいると、突然怒鳴り声が聞こえてきた。
『いい加減、何か言ったらどうなんだ!証拠も既に挙がってるんだ!!』
「ったく、この怒鳴り方は永尾さんだな。あの人、取り調べ苦手だからなぁ……」
とはいえ、やはり中の様子が気になる翔は耳をドアに当てて中の音を探り始める。
『だから何にも知らないんだってば!』
『お前がやったってことは所轄の調べでわかっているんだからな』
『だから、その辺のことは覚えてないって!!信じてくださいよぉ』
「堂々巡りだな、こりゃ」
「ほう、朝から精が出てるな?」
「うわぁ!?」
中を探ることに夢中になる余り近づいてくる人物の存在に気づかなかった翔はいきなり声をかけられ慌てて立ち上がる。
その様子に、声をかけた人物は軽くため息をついただけだった。
「なんだ、本部長じゃないっすか。驚かさないでくださいよ」
「驚かすつもりはなかったんだがなぁ。ちなみに今、永尾が取り調べてるのは、この間湘南で起きた事件の関係者らしい」
翔に声をかけた人物――風見俊介(かざみしゅんすけ)は軽く翔に謝ると、話を変えた。
「ああ、普通の学校が襲撃されたやつですよね」
「それが、所轄が調べたこと以外進展がなくてね。ところで、前言ってたあの話はどうなった?」
続けて風見は翔に質問をぶつける。
「ばっちりですよ、昨日飲んでるときに話を切り出したら、ちょっと悩んでからOKしてくれましたよ」
「そうか、それはよかった。これで我々の戦力も士気も上がるな」
翔の口から出てきた答えに風見は満足そうな表情を見せた。
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