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「それでは、捜査会議を始める。まずは、所轄からこれまでの報告だ」
教室のような会議室に集まった一同に向けて風見が声をかける。
それを受けて、一人の三十代半ばの男が前に出る。
「神奈川県警の梶間です。これまで我々の行ってきた捜査についてはお手元の資料にありますとおり……」
「どーして、こう回りくどいんだか。早いとこ本題に行けっての」
「仕方ないさ、俺達も所轄もそういうのが染み付いて離れないんだからな」
「民間上がりの俺には、理解しがたいっす」
「だが、この組織の8割は警察関係者だからな」
翔がつまらなそうぼやいている間にも刑事ドラマ的な場面は淡々と進み続けている。
実はこの「新東京セキュリティ」、表向きは民間企業なのだが実はある事件をきっかけに数年前に設置された政府の特殊機関「特務公安庁」である。
ちなみに、翔や岸田が所属しているのはその中でも事件解決最前線の実行部隊「捜査部内事0課(通称は捜査課)」であり、風見本部長の指示のもと世の中の「影」として動いている。
なお、なぜ一民間人の翔がこの組織にいるのかは今は伏せておく。
「目撃証言の中で一件目、二件目ともに複数あった証言には、魔法少女を見たという……」
「魔法少女だってよ、どうせコスプレとかそっちの類いだろ。何でこんなアニメな話に貴重な予算使うかな、もっとシャキッとした事件に使うべきだと思うがな」
「……マジでいたりして」
「まさかぁ?」
「その本人にあった人間が言ってるんすよ。試験と御神籤以外に神様を信じない男がこの手のウソつくと思います?」
「…………」
眉唾物の捜査報告に皮肉を言い続ける岸田に翔からの思わぬ反撃は岸田を閉口させるのには十分だった。
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