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その後も儀式的にいつものように授業は進んでいき、昼休みを迎えた。
「おい、次原!」
「な、何!?石塚君……」
声をかけられた望が振り向くと、ゴリラと見間違えそうな大柄な体格の男が見下すような視線を向けて立っていた。
そもそも、望はこの男が苦手である。
ただでさえ望と比べてもかなりの体格差があるうえに、無理な要求を毎回無理やり望に押し付けている。
おかげで陰では「ゴリラ押しのゴリ」等と言われているが、その圧倒的な存在感のせいで誰も表立って言えないでいた。
それどころか、つばめを含めた数人を除いた同学年の生徒のほとんどは気が弱く、小柄であまり男子に見えない望のことを風避けみたいに思っている節がある。
「やめないか、いつものことだが今度は何をさせるつもりだ!」
「うるせぇ、早見!」
石塚の蛮行を止めようと一人の好青年が望を助けようと動き出した。
早見と呼ばれた少年は望の前に出たとたん、派手に飛ばされてしまう。
その事態にすぐさま望が駆け寄る。
「だ、大丈夫?早見君」
「平気平気、何度も言うようだけど、望はあんなやつの言うことはないんだからな」
「う、うん……」
「ふん、そんなんだから『中身がない』とか言われるんだろ」
「貴様、人が気にしてることをっ!」
それを合図に再び戦闘が再開された。
その様子を見ながら、望は教室から外に出ようとしていた。
「望、どこ行くの」
「……そんなの、僕の勝手だろ。僕がどこに行ったっていいじゃないか」
つばめが心配する声を他所に望は教室を出ていった。
「望……」
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