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政宗さんが夜遅く家へ帰ってくる度に匂うあの香り。 夕飯は一人で食べるのがざら。 普段から物が少ない殺風景な政宗さんの自室に、急に物が増え出したり。 普段の会話だって、途切れ途切れで全く噛み合わない。 などと、まだまだ変わったことが沢山ある中で一番、俺が酷く傷付いたのは。 リツ「…俺の好きな飲み物が変わったことさえ気付かないって、ある意味笑えた。どれだけ俺と政宗さんとの溝が深まってるか、改めて思い知らされたよ」 シンタロウ「………。」 歳をとっていつしか、甘いココアから微糖のコーヒーを好むようになった俺。 別れる前に一度、久しぶりに家で2人で居られたあの時間。 「ほら」と馴れたように手渡された甘いココアを受け取って、愕然とするどころかやっぱりかと笑ってしまった。 リツ「あの生真面目な政宗が、今まで俺の好物を間違えることなんて一度もなかった。…あ、別に自惚れとかじゃない。本当にそうだったから。だからハッキリしたんだ」 もう、政宗さんの中に俺は存在しないと。 リツ「なのにやり直せ?…御免被る」 政宗さんにフラれた今、自分に残っているのは報われない虚しさと精一杯の強がりだけだった。
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