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緩やかに波打つ黒髪が、王族だけに許される金の柄のブラシでとかれていく。
侍従が丁寧に髪を持ち上げて、艶やかな髪にブラシをさし、とく。
それを繰り返してもらいながら、エミリアはちらりと侍従を見上げた。
馬車の中で揺られて早八時間。退屈したと喚く侍従に、ならばとブラシを手渡して今に至る。
いつもは何をしている時も口を閉じたりしないはずのこの男は、なぜか今日に限って静かだ。
「ヘイムス」
思わず名前を呼ぶと、侍従──ヘイムスは大きく肩をゆらして髪をとく手を止めた。
急に話しかけたので驚かせてしまったらしい。
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