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上からスポットライトのような光に照らされている。
それは俺を照らしているものの、その周りはまったく見えない。
真っ暗な視界は何も映さない。
足音が聞こえてきた。
コンクリートに裸足で歩くと鳴る独特の音。
静かな空間にそれは鳴り出した。
……またか。
そう、ここから始まるのだ。
いつも……。
俺の体はどこも動かない。
差し迫ってくる足音は俺にとって恐怖でしかなかった。
なんで……いつも……。
出てくるんだ……。
何だって言うんだ!……。
足音は大きくなってきていた。
自分を照らすライトが微かに照らす。
足。
人間の足だ。
その足は生傷があり、肉が見えそうなほど傷が深かったり、浅かったりする足だった。
ライトに照らされていたのが足だけだったが、徐々に近づいてきているこいつがライトに近づいてきているのが目でわかった。
来るな…来るな……!
いつも叶っていた願いは、残念ながら今回は届かないようで、体はどんどん近づいてくる。
裸?
どうやらこいつは衣服を着ていないようだ。
そして、足と同じく傷がある。
それは鮮明になり、スポットライトの中に入ってきた。
俺がいる
……。
傷だらけの俺が……。
しかし、俺の姿をした奴の目は、奇妙な瞳の形をしていて、まるでどっかの王国の紋章のような形をしていた。
瞳は緑色に光って、異常に傷の多い体に異様さを際立たせている。
その物体の口が開いた。
声は聞こえない。
いや……音として聞こえないが、わかってしまった。
何を言っているのか……。
その言葉の意味を理解し、血の気が引いていった。
壊(ころ)す!!
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