10人が本棚に入れています
本棚に追加
ゆうだち、と
呟きバスを待つ人の
爪先をふとよぎりつつ
西から迫る雨雲の
影さしせまる夏の道
そこに海など見えはせず
そこに風など聴こえない
ただゆうわりと思い出す
ぬるい潮騒、遠い声
永遠までの帰り道
はるけき道をバスはいま
ただのひとりも乗せぬまま
陽炎のなか進みくる
近すぎてもう掴めない
遠すぎてもう掴めない
くらぐらと影落とす雲
見上げて思う夕まぐれ
アスファルトにも染み込んだ
暗い匂いを嗅げばつと
バス待つ人の白々い
頬をゆくひとつめの雨粒
最初のコメントを投稿しよう!