教師

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「ふぅ……」 教室に着いた私は机のフックに鞄をかけると、スマートフォンを取り出して日課である携帯小説を更新した。 ジャンルは恋愛。 サイトで書き始めてから既に二ヶ月程が経っていた。 そもそも、小説部で書いていたものを修正し投稿サイトで公開してみたらと、萌にすすめられた事がきっかけだった。 今ではそれが日課となり、小説部とサイトの両方で執筆をこなすようになっていた。主に執筆はパソコンでおこなう。 たまに顔を出す顧問の先生に基本的な文章作法やルールを教わり、一年経った今ではある程度読める作品を書けるようになっていた。 そんな小説部で最近企画したイベントがある。 テーマは『非現実』。ジャンルは不問。 サイトで恋愛を書いている私は、どんなジャンルにしようかと悩んでいた。 「皆、どんなジャンルで書くのかな?」 独り言を呟く私。 毎日書く事で少しは文章も見れるようにはなってきたけど、まだまだ部の皆より劣っている。それが分かっていたから同じジャンルを繰り返し執筆していた。ジャンルによって、表現の幅を広げられるように。それは少しでも皆に追いつきたかったから。 でも、まだまだ視点のブレや表現力が劣っていると、自分の書き終えた作品を読んでみて思う。 何が足りないのか? どう伝えればいいのか? いつもそんなことばかりを考えていた。 そんな時におこなわれる事になったイベント。 小説を書くという孤独な活動の中で、それはとんでもなく刺激的な事だった。 いつも恋愛小説ばかりを書いていた私。この時ばかりは違うジャンルに挑戦してみようかなと思っていた矢先。 突然教室内に声が響いた。 「陽菜、おっは! つか、随分と遅いな?」
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