2/3
前へ
/19ページ
次へ
先日からの雨で、村には至るところに水溜まりが出来ていた。僕はバイトをサボり、宛もなく歩くと、たどり着いたのは皮肉にも、あの河川敷だった。親友が恋敵になった場所、そして…僕が初めて人を殺した場所だ。 川に近づき、ふと空を見上げた。 「今年は…花火、あがるかな…」 もうすぐ、毎年恒例の花火大会の日だ。また、あの日がやって来るのか。 駿がこの世から消えても尚、この暗い空に花を咲かせようと言うのか。 たとえ僕と凛子が結ばれることは無くても、この暗い空に花を咲かせようと言うのか。 もしかしたら僕は、それでもよかったのかもしれない。たとえ僕達が結ばれることは無くても、僕は昔みたいに、凛子の隣で花火を見上げられる。それだけで、もう僕はいい。 だって彼女の隣には、もう僕しかいないのだから。 僕は曇天から差し込む微かな光に、少し目を細めた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加