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先日からの雨で、村には至るところに水溜まりが出来ていた。僕はバイトをサボり、宛もなく歩くと、たどり着いたのは皮肉にも、あの河川敷だった。親友が恋敵になった場所、そして…僕が初めて人を殺した場所だ。
川に近づき、ふと空を見上げた。
「今年は…花火、あがるかな…」
もうすぐ、毎年恒例の花火大会の日だ。また、あの日がやって来るのか。
駿がこの世から消えても尚、この暗い空に花を咲かせようと言うのか。
たとえ僕と凛子が結ばれることは無くても、この暗い空に花を咲かせようと言うのか。
もしかしたら僕は、それでもよかったのかもしれない。たとえ僕達が結ばれることは無くても、僕は昔みたいに、凛子の隣で花火を見上げられる。それだけで、もう僕はいい。
だって彼女の隣には、もう僕しかいないのだから。
僕は曇天から差し込む微かな光に、少し目を細めた。
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