6人が本棚に入れています
本棚に追加
後日、花火大会の最終日のため、僕達はあの河川敷に来ていた。
昨日とは何ら変わらない、綺麗な花火だったが、駿の面白くなさげな顔も、それを見つめながら文句を言う凛子も、何ら変わりはなかった。
それどころか今日は、駿の様子が変に見えた。相変わらず残念そうに花火を見上げているが、今日は何かが違った。
うつろで、何かを抑えきれない目。今にも何かを叫びだしそうに、鋭く、そして真っ直ぐに、夜空を彩る花火を睨み付けていた。
花火も終盤に差し掛かると、ふいに凛子がトイレに向かった。
僕と駿のふたりきり、その真ん中に空いた隙間は、狭そうに見えて、凛子がいない分広かった。
もともと彼と仲が良くなかった訳ではない、小中とこの河川敷を凛子と僕と駿で駆け回り、良く秘密基地を作ったものだ。
なのに、どうしても狭められないこの距離は、一体何なのだろう。
いや…
「なあ…進…」
「何…?」
その答えはもう…
「俺…凛子のこと好きだ」
分かっていたはずだ。
その瞬間、何を思ったのか、夜空に咲いた花火は、今年一番の輝きを見せた。
最初のコメントを投稿しよう!