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自堕落な生活が始まったのは、四年目のシーズンが始まってすぐのことだ。 試合が終わると後輩を引き連れて高級クラブをハシゴする日々。 二日酔いでマウンドに立ったこともあった。 ホステスや、言い寄ってくる素人女も抱いた。 罪悪感を抱いたのは最初のうちだけだ。 自分の才能と実力にすべてが平伏す快感。 しかし、それは短い天下だった。 三球目。鷹見が選んだのは内角へのボールだった。 スライダーだ。 自分からサインを出して、有無を言わさず投げ込んだ。 ボールゾーンからストライクに入る球。 若い六番は一瞬のけぞり、慌てて出したバットは空を切った。 客席が沸いたのは、しかしそのせいではなかった。 変化について行けなかった捕手が、ボールの行方を見失ったのだ。 後逸――。 ランナーは三塁に進んだ。 ワンミスで確実に一点を失う、危険地帯に。
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