4

5/6
前へ
/30ページ
次へ
「このゲームが終わったら紹介してやる」鷹見は言った。「絶対だ。だからな――」 再び鷹見は捕手に囁きかけた。 今度は本当に配球の話だ。 歩かせるなど冗談じゃない。 「心配するな」 それでも渋る捕手に、鷹見はダメを押した。 「俺が押し切ったことにすればいい。監督にもそう言ってやる」 ようやく捕手は頷き、自分のポジションに戻って行った。 クビのかかったロートルが、良いところを見せたくて焦った挙句の無茶な配球――実際その通りだ――そう申し開きできるという計算が成り立ったのだ。 六番打者が左打席に戻る。 鋭い眼光。 待たされて集中力が切れたなどということは期待できないようだ。 可愛くねぇな。 鷹見は胸で毒づいた。 堂々たる体格。若くしてレギュラーを張れるだけの打撃センス。 鷹見の眼に眩しく映るのはナイター照明のせいだけではなかった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加