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全力を出せば抑えられた。
流してる俺から打って嬉しいか?
明日から本気を出す。
今度から。次から。
お笑いだ。
近頃の情けないガキどもと同じではないか。
次の一球はインハイへのストレートだった。
予想外だったのだろう、六番は打ってきたが振り遅れた。
ファール。カウントは2―2になった。
敢えてストレートを選択したのは、フィニッシュへの布石だ。
絶対的な決め球のない鷹見がこの場面を乗り切るには、手練手管を弄するしかない。
とりあえず賭けには勝ったが、鷹見に安堵はなかった。
口の中がカラカラに乾いている。
力の衰えた直球をスラッガーのインコースに投げ込むことの恐怖といったらなかった。
足が震える。
心臓が跳ね回る。
それでもマウンドを投げ出すことはしない。
しがみつき続けることをやめることだけはできないのだった。
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