6人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
悪いのは鷹見自身だ。
判ってはいても、認めることは難しかった。
責任を押し付けられる別の誰かを探し、見つけることができないと悟ると鷹見は逃げた。
酒に。女に。
当然成績は下がった。
元々峠を越していたこともあり、そのオフには解雇通告が鷹見を待っていた。
トライアウトは散々だった。
プロから弾かれた者たちが、再雇用を求めて集う合同テスト。
まだ使えそうな負け犬を探す場だ。
とはいえ、有力な選手には既に声がかかっている。
つまりこの場に再起を賭けなければならない者は、本当に崖っぷちに追い詰められているということだ。
当日は生憎の雨で、テストは球場内の室内練習場で行われた。
正規のブルペンが一つしかない為、鷹見らのグループは仮設のマウンドをあてがわれた。
ブルーシートの上に土を盛っただけの粗末なマウンド。
高さも硬さも到底満足いくものではなかった。
様々なユニフォームに身を包んだ参加者から、一様に失望のため息が漏れる。
しかし、抗議する者はいなかった。
敗者復活戦に臨む身に、そんな権利などないからだ。
最初のコメントを投稿しよう!