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けれど、魔法使いだけは何故だか絶対にいるような気がするのだ。魔女を名乗る女の人が、この間テレビに出てたし。
それに、杖を一振りすれば何でも叶うなんて素敵ではないか。他人の役に立つことだってできるはず。
あと五分で出なきゃならないわたしの為に、ハンカチを見つけるとか。
ため息をひとつつくと、車の下を覗いていた態勢から星乃は立ち上がった。あと一回りだけして、みんなの所に戻ろう。これ以上遅くなると、学校までマラソンするハメになる。
もはやあきらめ半分で、見るとはなしに目をくばりながら、マンションの正面玄関に向かう。
そして、そういうときにかぎって、捜し物ってやつは見付かるものなのだ。
遠くてハッキリとはわからないが、それは色といいポ○モンらしき絵柄といい、かっちゃんのハンカチに間違いないように見えた。
問題はその場所だ。よりにもよってりっちゅう(立体駐車場)の底に落ちてるなんて。
このマンションの駐車場は三段の機械式で、一段目だけが地上に出ている。
隣り合う駐車スペースのあいだにわずかにすきまがあり、風に乗ったハンカチはそこから下に落ちたに違いない。
底まではおよそ五メートル。ルフィーじゃあるまいし、手が届くわけもない。
「仕方ない、管理人さん呼ぶかぁ」
この朝だけで何度目だろう、ため息と共に星乃は言うと、回れ右をした。
管理人さんとかっちゃんのお母さんにこのことを話して、落し物を拾ってもらおう。そしてかっちゃんをなだめながら急いで学校に向かわなくちゃ。半分駆け足になるだろうから、小さい子がはぐれないように気をつけないと・・・班長代理は忙しいのだ。
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