5人が本棚に入れています
本棚に追加
『お前のそういう所、直した方がいいよ』
……顔が見えない……誰?
ここは何処なんだろう……。
私の目の前にいる人は私と同じくらいの年齢で男。
私達の周りには、濃い霧のように靄が立ち込めていて、場所が分からない。
目の前の男子の顔も見えない。
私達はすぐ近くに向かい合って立っているのに……。
「……那!柚那!」
突然その場にそぐわない大きくて、はっきりした声が耳に届く。と、同時に目の前の景色がどんどん薄れていく。
男子の姿も見えなくなっていく。
「あっ」
咄嗟に男子に向かって手を伸ばすが、その前に完全に姿が消えてしまう。
「柚那!柚那!」
「落ち着いてくださいっ。強く揺するのは危険です!」
「今、柚那が動いたんだよっ!起きるかもしんねぇだろ!!」
再び大きな声が届く。
私の体は誰かに強く揺すられていた。
……うるさい。
痛いから手を離して。
言いたいことが声にならず、頭の中でぐるぐる回る。
いい加減ウザくなって、閉じていた目をゆっくり開けた。
最初のコメントを投稿しよう!