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するとその人物は、私に目を向けた
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「あの子誰が引き取るかでモメてんでしょ?」
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「だったら俺が引き取るよ」と彼は言う
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「で…でもねぇ」
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「ほら…あの子もお年頃だし…彰君みたいに若い男の子とは…」
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「本人の意志も尊重してあげなきゃいけないし…」
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さっきまで私を傷つける声を潜めようともしなかった彼女達が
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私を気遣うような言葉を発した事に、吐き気がした
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「よく言うよ、ついさっきまであの子の意志なんて考える気もなかったクセに」
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彼がそう言うと、たちまち彼女達の表情が歪む
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「お前らに引き取られる位なら、俺んとこ来た方がまだマシだね」
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もう彼女達は何も言えなかった
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すると、彼は満足気な笑みを浮かべて
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「じゃ、行こっか」と私に笑いかけた
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私は灰色の世界の中で
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その眩しい笑顔を
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ただ
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見つめていた
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