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出会った時からずっと一番気になっていることを、俺は訊ねてみた。
「……俺について詳しいみたいだが、どうして俺のことを知っているんだ?」
俺の生年月日ならいざ知らず、両親の出張や一人暮らしをしていること、そして童貞などプライバシーに関わることまで知っているのが引っかかっていた。
それを知るのはごく少数の人間だけだ。
もちろん、このストーカー女に教えた記憶は一切ない。
「ん、いいよ。付き合ってくれたら教えるって約束だったし」
彼女はお茶を飲み干した空のコップをテーブルに置き、静かな口調で言った。
「優真、君にはお姉さんがいるよね?」
「ん?あ、ああ……いるけど」
彼女の言う通り、俺には血の繋がった姉が一人存在する。
名前は市原優子。
今年で大学四年生になる彼女は、今の大学に通うために安いマンションを借りて生活している。
俺にとっては、出来れば思い出したくない人物だ。
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