2997人が本棚に入れています
本棚に追加
不満そうな顔をする美紗さんを送るため、俺は玄関まで来た。
美紗さんがブーツを履くと、据わった蒼い瞳でじっとこちらを見つめてくる。
「な、なんでしょうか?」
「……なんか、妙に嬉しそうにしているのは私の気のせいかな?」
ギクッと肩が震えた。
気のせいではない、本当に嬉しいのだ。
こんなストーカー女と一緒に居ると、俺の命は何個あっても足りない。
「あ、あはは……気のせいだよ、うん」
「ふぅん……それならいいか。じゃあ、お別れのキスをしてくれる?」
「うぇっ!?俺から!?」
「さっきのキスは私からした。次は優真の番。……ん」
目を閉じて唇を突き出し、背伸びをしてくる美紗さん。
本当は好きでもない人にキスをするなんて真っ平ご免だが、拒めばカッターの刃が飛んでくるのは必至だ。
「……っ」
だから俺は彼女の肩を掴み、その唇にキスをするより選択肢はなかった。
最初のコメントを投稿しよう!