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「あ、あの……何かの間違いじゃ?」
心当たりがないのでそう訊ねると、美紗さんの目がすぅっと細められた。
「間違い?間違ってるのは、優真のほう。私が君の恋人なんだから、優真は私だけを見ていればいいの」
「えっ?いや、でも……」
「うるさい、黙りなさい」
「っ……!」
ゾッとするような視線と低い口調で命令をされ、恐怖を感じた俺は思わず押し黙ってしまう。
そんな俺の耳元で、彼女は懐からカッターを取り出した。
チキチキと刃を出し、俺に向ける。
「……ねぇ、優真。壊してあげよっか?」
「えっ……?」
一瞬、美紗さんが何を言っているのかすぐには分からなかった。
だが、すぐに理解する。
「君が壊れてしまえば、欲しがる人なんていない。そうでしょ?だから、私が壊してあげる。そうしたら、私とずっと一緒」
「み、美紗さん……っ!?」
「あはっ……あははっ……!」
部屋の中で狂った笑い声が響き、カッターが俺の首筋へと降り下ろされた。
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